椎名林檎。
私が初めて椎名林檎を知ったのは、高校1年の頃。
ギターを掻き鳴らす仕草、クールで挑発的な眼差し、色気のある綺麗な顔立ち、少しクセがある力
強い歌声、今までに聞いたことのないタイプの曲
調。何もかもがカッコイイ。
その当時、好きなアーティストは何人か居たが、
こんなにドキドキさせられるアーティストは居な
かった。(私の中で)
この人の全てが強く光り輝いて見えた。
何故ここまで惹かれたのか...
私は高校選びに失敗している。
私の通っていた中学は、悪い意味で昔ながらの、
‘’とにかく全員をどこかの高校へ進学させればOK‘’
というような学校だった。
私はずば抜けて頭が良いとは言えないが、テスト
の点数はそこそこ取っていたし、先生方ともうま
くやっていたので、焦ることはなかった。
地元の進学校か電車で通える範囲で中の上くらい
の偏差値の高校にでも行くんだろうな..とぼんやり考えていた。
しかし、このぼんやりした進路希望は、ぼんやり
したままどこかへ消え去り、1ミリも頭に無かっ
た、地元のヤンキー&ギャル率高め高校に通うこ
ととなるのである。
そうなった理由は、いくつかある。
担任から、不登校になってしまったNという友人
が学校に来られるように「架け橋になってほしい」
と頼まれ、放課後Nの家に立ち寄り、学校の配布
物を渡していたのだが、そこでNやNの家族から
自分の知らない世界を教わったこと。
母が病気で具合が悪く進路の相談などできなかっ
たこと。
自分に強い意思や夢がなかったこと。
自分より成績が低く、生活態度も悪かった子が、
私の第1志望校の推薦枠に保護者を使って入っ
たこと。(大人の事情に心底ガッカリした)
簡単に言うとこういうことなのだが、とにかく私
の人生は高校選びにより大きく変わっていくこと
になった。
家族には適当な理由を言い無理矢理納得させた。
周りの友達は、「何でゆるらか、そこ選ぶの?成
績良かったよね?」と心配してくれたし、高校の
面接では面接官に「....素朴な疑問なんだけど...何
でうち来るの?もっと上目指せると思うんだけ
ど..。」と不思議そうな顔で質問された。
私は、覚悟を決めていたので、堂々と皆に嘘を吐
いた。
「私は、○○高校の授業に興味がある。」と。
皆「そっかぁ...。」と納得してくれた。
それで良いのだと思っていたが、この嘘はその後
の自分を苦しめた。
入学式の日、ヤンキーやギャルの多さに眩暈を覚
え、すでに辞めたいと強く思った。
噛んだガムを廊下に吐き捨てる生徒、トイレでタ
バコを吸っている生徒、上履きに落書きをしてい
る生徒......眩暈がする。
学校全てから負のオーラを醸し出していた。
汚い。臭い。恐い。
こんな学校でも自分で決めた進路。
最悪な環境だとしても、3年間我慢するしかない。
とにかく、強くならねば。
ヤンキーでもギャルでもない、自分の位置を確立
してやるんだと決意した。
しかし、自分には「強さ」が足りない。
椎名林檎は私には無い「強さ」を持っているように
見えた。
だから、強く惹かれたんだと思う。
私の憧れであり、救いだった椎名林檎。
昨年、初めて彼女のライブに行くことができた。
何だか昔の自分に何十年か越しにご褒美をあげら
れた気分になった。
過去の自分にも、今の自分にも感謝することがで
きた。
最近また友人と椎名林檎の昔のDVDを見たりして
いたので、久しぶりに昔のことを思い出した。
たまに、思い出すのは良いことだ。
あ、高校時代の不思議体験も後で書こう。